最近、社員の方からこんな質問を受けました。
「AIやロボットなど、技術革新がこれだけ進んでいるのに、なぜ私たちは1日7時間(あるいは8時間)も働き続けているのでしょうか?もっと短くならないのでしょうか?」
とても鋭い質問ですね。テクノロジーが私たちの仕事を効率化し、生産性を飛躍的に向上させているのは事実です。一見すると、労働時間はもっと短縮されても良いはずなのに、なぜそうならないのか?今日は、この複雑な問いについて、私なりの見解をお話ししたいと思います。
1. 生産性向上は「総生産量の拡大」に使われる
技術革新は、確かに個々の業務の生産性を高めます。例えば、かつては手作業で行っていたデータ入力が自動化され、短時間で大量の処理が可能になりました。
しかし、この生産性向上は、必ずしも「労働時間の短縮」に直結するわけではありません。多くの場合、生産性の向上は、**「より多くの商品やサービスを生み出す」**方向に使われます。
企業は市場競争に勝ち抜くために、より多くの顧客に、より高品質なものを、より早く提供しようとします。これにより、個々の業務の効率が上がっても、全体の業務量や目標が高まり、結果として労働時間は変わらないか、場合によっては増えることもあります。
2. 経済成長と消費者の「より良い」を求める欲求
経済全体が成長し、人々の生活水準が向上すると、消費者の欲求やニーズも多様化・高度化します。私たちは、ただ効率的に働くことを求めるだけでなく、「より良い」生活や「より豊か」な体験を求める傾向があります。
技術革新によって、より高性能な製品やより便利なサービスが手に入るようになると、それらを享受するために、私たちはさらにお金を稼ごうとします。つまり、「生活に必要な最低限を稼ぐための労働」から、「より豊かな生活を追求するための労働」へと意識が変化し、結果的に労働時間を維持する動機になることがあります。
3. 組織文化と評価システムが影響することも
多くの企業では、長時間労働を「頑張りの証」や「貢献度が高い証」と見なす古い組織文化や慣習が根強く残っている場合があります。いくら技術が進化しても、上司が長時間働くことを是とし、残業が多い社員を高く評価するような仕組みがあれば、社員は自ずと長時間労働を強いられることになります。
また、曖昧な職務内容や、成果主義の名の下に過度な競争を煽るような評価システムも、労働時間短縮を阻む要因となり得ます。
4. グローバル競争とプレッシャー
今日のビジネスはグローバル化が進んでおり、世界中の企業が競争相手となります。海外の企業が長時間労働を厭わない環境であれば、自社だけが労働時間を大幅に短縮することで競争力が低下するのではないか、というプレッシャーが生じることがあります。特に日本は、国際的に見ると決して労働時間が短いわけではないものの、生産性とのバランスにおいては課題があるとも指摘されています。
5. 「仕事」そのものの変化と多様化
技術革新によって、単純作業はAIやロボットに代替される一方で、人間にはより複雑で創造的な仕事が求められるようになりました。問題解決、戦略立案、イノベーション、人とのコミュニケーションといった、より高度なスキルを要する仕事は、往々にして時間のかかるものです。
また、テレワークやフレックスタイム制など、働き方の多様化は進んでいますが、その一方で「いつでも仕事ができる」環境が、かえって労働とプライベートの境界を曖昧にし、長時間労働につながるケースも指摘されています。
今後の展望:より良い働き方を目指して
とはいえ、労働時間短縮への動きは、世界的に、そして日本国内でも進んでいます。働き方改革の推進、ワークライフバランスの重視、そして社員のウェルビーイングへの関心の高まりは、これからの労働のあり方を大きく変えていくでしょう。
具体的には、
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業務の棚卸しと最適化: 惰性で行っている業務はないか、テクノロジーで代替できる業務はないか、常に問い直す必要があります。
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生産性向上のための投資: 新しいツールやシステム導入だけでなく、それらを使いこなすための教育にも力を入れるべきです。
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成果主義の深化: 時間ではなく、アウトプットの質や量、生み出した価値で評価する仕組みをより一層強化します。
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意識改革と文化醸成: 経営層から現場まで、労働時間短縮が生産性向上につながるという意識を共有し、実践できる文化を醸成していきます。
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多様な働き方の推進: 個々のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を提供することで、社員のエンゲージメントと生産性の向上を図ります。
技術はあくまでツールです。そのツールをどのように活用し、私たちの働き方や生き方を「より良く」していくかは、私たち自身にかかっています。
まとめ
技術革新が進んでも労働時間が劇的に短縮されないのは、単一の理由ではなく、経済、社会、組織、そして個人の価値観が複雑に絡み合っているからです。しかし、私たちはより良い働き方を追求し続けることができます。
このブログ記事が、皆さんの働き方について考えるきっかけになれば幸いです。
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