
はじめに:ただの「背景」じゃない、私たちの「生活」そのもの
秋が深まり、スーパーの棚に並ぶキノコを見るたび、ふと思うことがあります。私たちが普段、当たり前に享受している「豊かさ」の源は、実はすぐそばの**「森」**にあるのではないか、と。
最近、森や林は「環境保全」や「CO2吸収源」として語られがちですが、私にとって森は、それ以前に**「暮らしの倉庫」でした。特に、木材、きのこ、山菜、そして薪炭材といった森の恵みと、私たちの生活の関係を振り返ると、現代社会が失った「ちょうどいい暮らしの知恵」**が見えてくる気がするのです。
森は天然の「おすそわけ倉庫」
子どもの頃、父と山に入った記憶があります。それは「収穫」というより、森からの**「おすそわけ」**をもらいに行く感覚でした。
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食卓の主役たち: 春のほろ苦い山菜、秋の香り豊かな天然きのこ。これらは、肥料や設備に頼らず、森そのものが育ててくれる季節限定の贅沢品です。旬のものを旬のうちにいただく、このシンプルさが最高の豊かさだと感じます。
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温もりとエネルギー:薪炭材の知恵: 昔、薪や炭は暖房や煮炊きに欠かせない、命綱のようなエネルギー源でした。注目したいのは、薪炭材のために森を伐採しても、それはまた再生し、次の世代に資源を引き継ぐことができるという点です。石油やガスと違い、森の資源は**「再生可能な資源」**。このサイクルこそ、私たちが忘れてはいけない持続可能な知恵です。
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暮らしの土台:木材の強さ: 私たちの家、家具、伝統工芸品...。木材は、切られた後も呼吸を続け、湿度を調整し、私たちを包んでくれます。森の恵みは、形を変えても私たちを守り続けてくれるのです。
独自の考え:森が教えてくれる「足るを知る」
現代の私たちは、「足りない」「もっと欲しい」という経済成長の論理で生きています。しかし、森からの恵みを受け取る暮らしは、私たちに別の価値観を提示してくれます。
それは、**「足るを知る」**ということです。
キノコも山菜も、採りすぎれば来年、森は同じ恵みを返してくれません。必要な分だけいただき、木を伐採したら、また苗を植えて育てる。この「与える」と「受け取る」のバランスこそが、森と人の関係の本質です。
森は、私たち人間が、自然の一部として「どのように共存すべきか」を、資源の豊かさという形で、身をもって教えてくれているのではないでしょうか。
終わりに:小さな一歩から、森との関係を見直す
森からの恩恵に感謝し、その健全さを守っていくことは、巡り巡って未来の私たちの豊かさに繋がります。
今日からでも、国産材を使った製品を選んでみる、地元の山菜やキノコを味わってみるなど、小さな一歩を踏み出してみませんか?
